天照大御神は皇祖神なのか

天照大御神とは

葦原千五百秋瑞穂の国は、是、吾が子孫の王たるべき地なり。爾皇孫、就でまして治らせ。行矣。宝祚の隆えまさむこと、当に天壌と窮り無けむ。

天照大御神

有名な天壌無窮の神勅を受け、天孫である瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)は、三種の神器を携えて降臨し、日本の王となりました。
この瓊瓊杵尊に日本の王権を与えた神こそが、皇祖神天照大御神(あまてらすおおみかみ)です。

アマテラスは、皇祖神であり、伊勢の内宮に鎮座する太陽神であると言われてきました。
皇祖神たる天照大御神に限っては、たとえ皇后陛下・皇太子殿下といえども天皇陛下の許可なしに幣帛を捧げることが許されないのです。

アマテラスは本当に皇祖神なのか

しかし、本当にアマテラスは皇祖神なのでしょうか?

この点、決してそうではないというのが多くの学者の指摘するところです。

ヤマト王権が成立する以前から、各地の首長によって祀られていた「日神(ひのかみ)」が、王権の成立とともに集結し、一元化された結果、生み出されたものとされています。

日本のみならず、太陽崇拝は世界中で見られる傾向です。
エジプトのラー、ギリシャのアポローン、ヒンドゥーのヴィシュヌなどもそうですし、クリスマスですらその原型は世界中で祀られる冬至祭の一つにすぎません。
このように原アマテラスは日本中に存在し、その痕跡も多く見つかっています。

それでは皇祖神はいったい誰なのでしょうか。

ここで歴史民俗学者の岡正雄や古代文学者の松前健らは、タカミムスビこそが皇祖神であるとしています。
皇室の公然たる氏神である以下の八柱の神を「御巫八神(みかんなぎはっしん)」といいます。

  • 神魂   (かみむすひ)
  • 高御魂  (たかみむすひ)
  • 生魂   (いくむすひ)
  • 足魂   (たるむすひ)
  • 玉留魂  (たまつめむすひ)
  • 大宮乃売 (おおみやのめ)
  • 大御膳都神(おおみけつかみ)
  • 辞代主  (ことしろぬし)

たかみむすび

仮に皇室の祖が大陸から渡ってきたとした場合には、父権的北方シャーマニズム文化に属するものであり、祖神は男性神である必要があります。
これに対し、古来より日本列島に見られる母権的アニミズム文化から生まれる女性神が融合した結果、アマテラスは誕生したのでした。

そもそもアマテラスは男性神であった可能性があります。
天皇家は伊勢神宮を祀るために、皇女を斎宮として出していました。
アマテラスの別名である「大日女尊(おおひるめのみこと)」、「大日霊(おおひるめ)」、「大日女(おおひめ)」は、いずれも本来太陽神に使える巫女を表しています。

祀る者がいつの間にか祀られる側に置換される−−−

これも歴史や宗教のおもしろいところであります。

いつからアマテラスは女性神になったのか

それでは、いつごろこの転換が行われたのでしょうか?

多くの学者が指摘するのが、7世紀末、持統天皇の御代としています。

持統天皇

夫である天武天皇の死後、皇位を継承したのは天智天皇の皇女である持統天皇でしたが、本来の後継者たるべき息子の草壁皇子が急死したにもかかわらず、皇統を孫の軽皇子(将来の文武天皇)に継がせたかった持統天皇は、天孫降臨のエピソードを一部書き換えて、持統天皇から将来続くであろう皇統の正当性を主張したのだとされています。

当時は日本書紀が編まれていましたが、本来、天智天皇の息子である大友皇子を討って皇位を勝ち取った天武天皇の正統性を示すために綴られた日本書紀に一部修正の必要が生じたのかもしれません。

天武天皇

天智天皇と天武天皇は兄弟であるとされていますが、それは後日の創作であろうと個人的には考えています。
実際にはこのタイミングで皇統は別の系譜に移っていたものの、それを隠ぺいするために遡って2人は兄弟になったのでしょう。
持統天皇が本当に天智天皇の娘であったかどうかもわからないですよね。

実際には文武天皇の御代も長く続くことはなく、元明天皇、元正天皇を経て、聖武天皇に行き着きます。
これが天孫ニニギからさらにその曾孫たる神武天皇(イワレヒコ)へと続く系譜を示唆しているといってもいいのかもしれません。

おにぎりとおむすびについて

余談ですが、主に関西では「おにぎり」といい、関東では「おむすび」というとされていますが、これがニニギかタカミムスビに由来するかという説があります。

おにぎりおむすび

造化三神であるタカミムスビに由来する「おにぎり」は、それゆえに三角形でなければならないのだか。

真相はわかりません(笑)。

 


You may also like...

2 Responses

  1. 金鵄 より:

    なかなか、良い所に目を向けている。 高皇産霊神は、高天命(たかまのにこと)という名であり、高天原の主である。 天の高天原を地にも作り、天と地を結ぶのが役目。 第五代高皇産霊神は、トヨケと言い、漢字にして豊受と書く。このトヨケは、またの名をウカノミタマともいう。 第六代高皇産霊神は、神産巣日神(かんみむすび)であり、天の高天原に対して、地の高天原を司る。その名は、ヤソキネと言う。そして第七代高御産巣日神は、タカキネと言い、高木神と言われる。

  1. 2015年6月13日

    […] 天照大御神は皇祖神なのか […]

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。