繰り返される「あの議論」
栄光のマクラーレン・ホンダの復活が話題を呼んでいる2015年のF1。
F1はこれまで数多くの英雄とマシンを送り出し、モータースポーツの最高峰として世界中の人々を魅了し続けています。
そんな中でも、スポーツファンにありがちなのは、「あの議論」。
歴代最強は誰なのか?というやつです。
たとえば。
マラドーナとメッシはどちらがすごいのか?
モハメド・アリとマイク・タイソンはどちらが強いのか?
もちろんF1でも、
「アイルトン・セナと、ミハエル・シューマッハのどちらが偉大なドライバーだったのか」
というのは、永遠に尽きない議論として、ファンたちの間で繰り広げられています。
上記の議論については、また別の機会にとりあげるとして、今回は、
「F1最強のマシンはいったいなにか」
というテーマでお送りしたいと思います。
といっても、「何をもって最強とするか」というのは、何に重点を置くかで変わってきます。
単に速いだけというだけでは、技術が進化していく、より新しいマシンのほうが速いという結論になってしまいかねません。
結局は、「その年の中で圧倒的に速かったか」「どれほど強烈なインパクトを残したか」「実績を残したか」という基準で考えてみたいと思います。
それでは実際に、F1史上最強マシンの候補たちを見てみましょう。
マクラーレン MP4/4
まずは、マクラーレンのMP4/4です。
なんといっても、このマシンを挙げないわけにはいきません。
登場した1988年グランプリ全16戦中15勝(勝率94%)、ポールポジションも同じく15回。
加えて、セナ・プロストのワンツーフィニッシュも合計10回。
唯一勝てなかったイタリアGPでも,セナが周回遅れのJ・Lシュレッサーに絡まなければ圧勝のはずでした。
もちろん、セナ・プロストという2人の大天才がドライバーであったことも大きいですが、やはりF1史上空前絶後のマシンといっていいでしょう。
1992年のウィリアムズ・ルノーも、2004年のフェラーリも、これに匹敵する記録を残していますが、なんといっても前者はマンセル、後者はシューマッハという、圧倒的なエースドライバーがいたのに対し、1988年のマクラーレンは、最後までセナとプロストが火花を散らしてタイトルを争うという、F1史に残る戦いが繰り広げられた点が全く異なっており、このマシンの伝説を作り上げていると思います。
さらに、我々日本人としては、ホンダエンジンRA168Eが最強というのは、本当に誇らしいものです。
FISA会長のバレストルによる「ホンダ潰し」=NAエンジン優遇の逆境の中で、ホンダはあくまでターボエンジンで闘い抜きました。
過給圧を2.5バールに下げられ、タンク容量を縮小されても、電子制御、燃料温度制御、セラミックタービンブレード、ボールベアリング軸受けなどの改良を重ね、パワーを落とすことなく燃費を向上させた、ホンダのエンジニア魂は、長く記されるべきです。
鬼才ゴードン・マーレイが設計したシャシに、この最強ホンダエンジンが搭載されるのですから、まさに鬼に金棒。
とにかくF1史上最強の伝説のマシン、それがMP4/4なのです。
こちらは珍しい、MP4/4とMP4/5の対決動画。
1988年のモナコです。
ウィリアムズ FW14Bルノー
いやいや、待てよと。
確かにMP4/4は強かったが、それはセナとプロストがいたからじゃないの?
純粋に、マシンだけみたら、もっとすごいマシンがあったのではないの?
そういった問いに対して必ず名前があがるのが、ウィリアムズFW14Bルノーです。
空力の天才、ニューウェイがデザインし、アクティブサスペンション、パワステ、セミーオートマなどなど、ありとあらゆるハイテク機能を満載の超絶マシンです。
中でも焦眉はやはり、アクティブサス!
電子制御されたサーボバルブによってアクチュエーターの油圧をコントロールすることができ、車速やステアリングの舵角を検出し、コーナー角と車速から必要なダウンフォースとそれによる車体変化を想定して車高を積極的に変更させ、常に理想的な車高を保つ。
こうすることによって、必要なダウンフォースを得ながら、直線ではよりパワーを効率的に活用できるという、まさに夢の様な技術でした。
マシンの戦闘力のあまりの違いに、プロストは1年間の浪人を受け入れてウィリアムズと契約し、セナに至っては、ノーギャラでもいいから乗りたいといったほどです。
実際に常勝マクラーレン・ホンダを打ち破ったのが、このウィリアムズ FW14Bでした。
16戦15勝のマクラーレンMP4/4だろうが、チート過ぎると言われたRB6だろうが、「純粋な最速マシン」という意味では、1992年のFW14Bには敵わないという人たちが大勢います。
とにかくあまりのすごさに、すでにそれはF1の域に収まらず、その上のカテゴリに属するマシンとまで言われ、「アナザープラネット」と形容されました。
1992年シーズンは、開幕5連勝、第11戦でマンセルがチャンピオン決定。
あっという間にタイトルが決まってしまったシーズンでした。
https://www.youtube.com/watch?v=1zgEa2AYJMw
フェラーリ F2002
F1史上最も偉大な記録を残したドライバーといえば、、、
そう、ミハエル・シューマッハです。
彼が持つ記録(の一部)は以下のとおり。
- ドライバーズチャンピオン獲得7回(歴代1位)
- 通算優勝91回(歴代1位)
- 通算PP獲得69回(歴代1位)
そのシューマッハが7回の王座についた中でも、2002年のF2002は最強の呼び声が高いマシンです。
シューマッハは、このマシンを駆ってシーズン全戦完走・全戦表彰台という安定感をみせ、ナイジェル・マンセルの記録を更新する年間11勝を達成(F2002では10勝)。
第11戦フランスGPで早々とドライバーズタイトル3連覇を決めました。
最終的に、17戦15勝とフェラーリ黄金期にふさわしい圧勝で終え、「強すぎてつまらない」という声があがったほど。
まさに皇帝にふさわしい最強マシン。
「これこそがF1史上最強のマシンだ」という人は多いのではないでしょうか(特にシューマッハファン)。
しかし、フェラーリはやはりいい音しますね!
レッドブル RB6
レッドブル・レーシングの2010年マシン、RB6にはブロウン・ディフューザーという魔法のようなシステムが使われていました。
マシンに取り入れたのは、ご存知、空力の天才ことエイドリアン・ニューウェイです。
これは排気口をディフューザー付近の非常に低い位置に設け、エンジンの排気をディフューザーに直接吹きかけることでディフューザー周辺の空気の流れを高速化し、
ダウンフォースを増加させるものです。
もっとも、この方式自体は目新しいものではなく、ニューウェイの前任チームであるマクラーレンで2001年まで採用されていたものでした。
このディフューザーの効果もあって、大幅な空力レギュレーション変更前よりもストレートは15km/hくらい遅いにもかかわらず、なんとラップタイムは1秒前後速いマシンになってしまいました。
もはや空力の力こそがF1勝利のための絶対条件。
2.4リッターV8エンジンのRB6ですが、V10エンジン搭載車よりもラップタイム的に速いとまで言われました。
最終的にシーズン9勝、19戦中15ポールポジションを獲得し、ベッテルがドライバーズチャンピオン、チームはコンストラクターズタイトルと、ダブルタイトル制覇をもたらしました。
現代F1ながら他チームに1秒以上差をつけることもしばしばあり、2.4リッターV8エンジン+18000rpmと馬力がかなり落とされながらも、オーストラリアGPとハンガリーGPでコースレコードを記録してしまいました。
いったいF1の技術はどこまで進歩するのでしょう。
おそるべきマシン、そして、ニューウェイおそるべしです。
この後、あまりにチートすぎるブロウン・ディフューザーは禁止されてしまいました。
さぁいかがだったでしょうか。
もちろんここに挙げたマシン以外にも、名車はいくらでもあります。
皆さんは、どのマシンがF1史上最強だったと思いますか。
FW14Bの項の2枚目の写真、FW14Bではなく前年のFW14ではないでしょうか?
FW14Bって言うほどか?
リカルドが全然乗れてなかったやん