「ちげーよ!あれは戦車じゃねーし!」
たとえばパレスチナやイラクなどの紛争地域のニュースをTVで見ていると、軍用車両が出てくることがありますね。
そのときに、なんとなく大砲っぽいのが付いてるということで、「戦車だね~」なんて適当なことをいうと、ミリタリー好きな人などに「あれは戦車じゃないよ、自走砲だよ」なんて言われてしまうことがあります。
そうはいっても特に興味や関心がない場合は、大砲がついていてキャタピラ(これも実は米国Catapillar社の登録商標なので、無限軌道とか履帯というのが正しいのですが)で走行していれば、それは戦車でしょと思ってしまうのが通常だと思います。
それでは、戦車と、戦車駆逐車と、駆逐戦車と、突撃砲と、自走砲と、いったいなにがどう違うのでしょうか?
というわけで、軍隊というお役所的な性質ゆえに生じた予算分捕りと仕事の押し付け合いによって、それだけの車種が生まれたというのが真相だということです。
それぞれの説明
戦車
- 非常に強力な装甲と100~120mmぐらいの口径の主砲を備えていて、機動力が高い(種類にもよるが、最高速度50~80km)。
- 大体2~4,000mくらいの範囲で、相手の戦車、装甲車両に対抗することが目的なので、主砲弾は高初速で、弾道はほぼ水平。
- 装甲を打ち抜くための徹甲弾や成形炸薬弾等を使用。
- 昔の重騎兵に相当するもので、平原等での会戦だと、突破力の発揮が期待されている。
自走(榴弾)砲
- 155~203mm程度の口径の砲を備えていて、射程は15~25kmくらい、弾道は放物線を描く。
- 目標地域に存在する部隊や陣地への打撃が目的で、それ自体による突破は行わないため、装甲は無いか、あっても破片等からの防御のみを目的とした簡易なものに限られる。
- 戦車のような高機動や走行中の射撃は想定していない。あくまで敵部隊や陣地が攻撃対象。
- 射程の延伸を図るため、長砲身の砲を採用している場合が多く、戦車に比べると、砲が車体に対して長い。
- ナポレオンのころに馬や人力で牽いていた大砲に相当する。
- 当然相手の砲兵からの砲撃を受けるので、こちらが射撃したあと速やかに陣地転換できるように、トラック等による牽引ではなく、自分で機動できるようになったもの。
- 目的から分かるように、装甲の破壊ではなく面の制圧が目的なので、弾丸は主に榴弾(内部に火薬が詰めてあり、弾着時に炸裂し、爆発と破片により広範囲に破壊・殺傷を及ぼす)を使用。
- 巨大な手榴弾を、大遠距離に投射するような感じ。
99式155mm自走榴弾砲
突撃砲
- 第二次大戦中のドイツによる使用が有名。
- 通常、陸軍の基本的な戦略単位である師団(歩兵)は、歩兵部隊、砲兵部隊、後方部隊等から編成されている。歩兵部隊には、歩兵のほかに迫撃砲を運用する部隊が所属しており、射程20km前後を担当する砲兵部隊よりも近距離(数千m)の敵部隊に対する近接火力支援を担当している。従来(第二次大戦前)の会戦では、砲兵部隊による制圧射撃の後に歩兵部隊が突撃というのが通常の戦法だが、基本的に砲兵は機動力が低く狙いが甘く精密射撃に向かないので、個々の戦場に火力支援をするのは難しかった。特に両軍が入り混じっての混戦状態での支援射撃は味方を撃ってしまう可能性もあり難しかった。そこでドイツの電激戦ではJu-88急降下爆撃機による爆撃を行うことにより、即応性、指向性の高い火力支援を行おうとした。しかし、砲兵に比べれば即応性は高いものに、歩兵部隊が敵勢力を発見してから、航空機が飛んで来るまでには、なおそれなりの時間がかかり、即時の対応にはまだ足りなかった。そこで、歩兵部隊に随伴し、近接火力支援を行う車両として突撃砲が登場した。
- 通常、近接火力支援は迫撃砲で行うが、それを自走させることにより高機動力を与えて即応性を高め、更に戦車のような形態を採用することにより、敵発見次第、即時に攻撃することが可能だった(迫撃砲や自走砲だと、停車して陣地構成したり、配置し直す必要がある)。
- よって、駆逐戦車同様、戦車に比べれば旋回砲塔がなかったり、装甲が厚くなかったりと違いがあるが、それは運用目的に由来するものである。
駆逐戦車
- 駆逐戦車と突撃砲はよく似ているので、区分が難しい。
- あえて言えば、突撃砲は歩兵の支援が目的で、駆逐戦車は戦車の支援が目的といえるかも。
- 駆逐戦車は味方の戦車部隊を支援し、敵の装甲車や歩兵部隊等の排除を目的とし、場合によっては敵の戦車も相手にすることがあった。
- 戦車未満、装甲車以上で、戦車に比べると旋回砲塔が省略されていたりとスペックが限定的なのは上記の支援目的という理由からくるものと思われる。
ヤークトパンター
ちなみにヤークトパンターを「ロンメル」と呼ぶオヤジがいますがこれはタミヤの仕業です。
当時タミヤが有名なロンメル将軍の名前を勝手につけてプラモを売ったのです。ロンメルと呼ぶ奴は年齢がバレます。
戦車駆逐車
- 戦車を撃破する事を目的とする装甲車両。
- 第二次世界大戦期に多く製作・運用されたが、現在ではほぼ見られなくなっている。
- 型落ちして役に立たなくなった旧式戦車を再利用するための苦肉の策というのが実情。
いかがでしょう?
わかったでしょうか?
これでこれから戦争映画やニュースを見るたびに、間違えずに適切に戦車や突撃砲、駆逐戦車や自走砲をばっちり見分けることができますね!
1 Response
[…] 戦車と他の車両の違いについては、こちらもどうぞ。 何が違う?戦車と自走砲と突撃砲と駆逐戦車と戦車駆逐車 […]