原子力空母の開発と成り立ち
以前に世界最強の南雲艦隊をご紹介したことがあるかと思います。
その中で、第二次世界大戦の中で、それまでの巨大な戦艦を中心とする大艦巨砲主義から空母と航空機を中心とする航空主兵主義へと移っていったことについて触れました。
アメリカは戦後において世界の覇権を握るために、第二次世界大戦で得た教訓を糧として、航空主兵主義を推し進めます。
同様にこれも大戦中に得た原子力を活用して、原子炉を搭載し核反応による反応熱を熱源とする機関を備え、圧倒的に長い航続力を誇る、原子力空母の開発に取り組みます。これにより世界中の海の覇権を握ることができるわけです。
その結果、1960年に世界最初の原子力空母、エンタープライズ級が配備されました。
ただし、エンタープライズ級はCVN-65 エンタープライズ1隻のみしか配備されず、その後はキティホーク級が配備されていきました。
その後、量産して配備された原子力空母としては、このニミッツ級が最初のものとなります。
世界最大最強の空母=ニミッツ級
ニミッツ級では、船首と飛行甲板前部を一体化したエンクローズド・バウや舷側エレベータといった第二次世界大戦中の開発された技術に加え、航空機運用を効率化するアングルド・デッキ、近代化の象徴ともいえる最新のウェスチングハウス・エレクトリック製A4W加圧水型2基を搭載しており、まさにアメリカ空母技術の集大成といってよい艦船となっています。
1968年に建造が開始され、1975年から配備が開始されました。
それからというもの、平均して3-4年に1隻の割合で配備され、最終艦のCVN-77 ジョージ・H・W・ブッシュは2008年に配備されています。
40年に渡って世界最大最強の空母として、この地球上の海のあらゆる場所で君臨し続けているのです。
2012年12月には、CVN-65 エンタープライズが退役したため、現在のアメリカ海軍の原子力空母はその総てがニミッツ級となっています。
スペックは以下のとおりです。
- 全長:330-332.9m
- 全幅:76.8m
- 基準排水量:80,000t以上
- 満載排水量:95,000-103,637t
- 機関出力:28万馬力
- 最大速度:30ノット以上
- 武装:CIWSx3、8連装シースパロー対空ミサイルランチャーx2、RAM近接対空ミサイルランチャーx2ほか
- 乗員数:3270名
規模もこれまでの軍用艦船の中で最大であれば、出力や排水量、乗員数も世界最大。
航空機とヘリコプターで最大90機までを艦載し、これらの4基の蒸気カタパルトで射出することができる、圧倒的な航空機運用能力はまさに世界最強!
1隻の建造費は、なんと4000億円以上にものぼります。
従来は、F-14艦上戦闘機(トム・キャット)、F/A-18艦上戦闘機(ホーネット)、A-6艦上攻撃機(イントルーダー)を艦載していましたが、現在はF/A-18E艦上戦闘機(スーパーホーネット)、そして今後はF-35C艦上戦闘機(ライトニング)を運用することとなります。
https://www.youtube.com/watch?v=VRNNUVVqFVg
https://www.youtube.com/watch?v=xPU_57u5bqM
通常は、イージス艦などの他の艦船と組み合わせてCSG(=Carrier Strike Group。空母打撃群)を構成し、運用されていますが、小規模国家なら1隻で壊滅させることもできるというその存在は、まさにアメリカ合衆国の威信そのものを体現しているといってよいでしょう。
それゆえに、10隻中、実に7隻までが歴代大統領の名を冠しています。
マンガにおいても、こち亀では、ジョディーが乗っている船としてカール・ヴィンソンが出てきますし、
かわぐちかいじの名作『沈黙の艦隊』でもカール・ヴィンソンは世界最大の空母として出てきます。
ニミッツ級・全10隻
最初の3隻、後の7隻では、上部構造物や装備の一部に差異があります。
それではニミッツ級原子量空母全10隻を一挙にご覧ください。
1番艦 CVN-68 ニミッツ
2番艦 CVN-69 ドワイト・D・アイゼンハワー
3番艦 CVN-70 カール・ヴィンソン
4番艦 CVN-71 セオドア・ルーズベルト
5番艦 CVN-72 エイブラハム・リンカーン
6番艦 CVN-73 ジョージ・ワシントン
7番艦 CVN-74 ジョン・C・ステニス
8番艦 CVN-75 ハリー・S・トルーマン
9番艦 CVN-76 ロナルド・レーガン
10番艦 CVN-77 ジョージ・H・W・ブッシュ
なお、アメリカ海軍では、第三世代原子力空母、フォード級の1番艦、「CVN-78 ジェラルド・F・フォード」の配備が予定されており(2016年予定)、この新世代空母が配備されるまでは、このニミッツ級が地球上で最大最強の艦船で在り続けることでしょう。