世界最強の戦闘機、F-22ラプター

 

F-15 イーグルを超える戦闘機

ライト兄弟が飛行機を1903年に自作の飛行機で大空へと踏み出してから、いつの時代も大空を制するのは飛行機、その中でも戦闘機でした。

この記事でも書いたように、戦闘機、なかんずく制空戦闘機は、空での支配権を取るために、対航空機用の高い戦闘能力を有しています。
戦闘機と攻撃機の違い 

1972年の登場以来、永きにわたって、「最強の戦闘機」の名称をほしいままにしてきたのは、F15 イーグルでした。

F-15

しかし、旧ソ連がMig-29 フルクラムとSu-27 フランカーという戦闘機を次々に開発したことに対抗して、西側陣営の盟主であるアメリカは、それを凌駕する戦闘機を開発する必要に迫られたのです。

その結果「ATF(Advanced Tactical Fighter)計画」という名の下、圧倒的に高性能な戦闘機の開発の取り組みが始まりました。
これまでの第4世代戦闘機の次世代としての、「第5世代戦闘機」の開発です。

候補は2つの機体に絞られました。

ロッキード・マーティン社の開発したYF-22 ラプターと、ノースロップ社の開発したYF-23 ブラック・ウィドウ(グレイ・ゴースト)(下記写真)です。

YF-23

搭載するエンジンについても、競争試作としてプラット・アンド・ホイットニー社のYF119-PW-100とGE社のYF120-GE-100が開発されました。
YF-22およびYF-23の4機の試作機、及びYF119とYF120両エンジンの開発には、約38億ドルの費用が費やされています。

そして比較最終試験の結果、1991年にYF-22 ラプターとYF119-PW-100の組み合わせが採用となりました。
一説によると、YF-23のほうが性能的には優れた成績を示したにもかかわらず、政治的な圧力等により、YF-22が採用されたとされています。

そして制式採用されたYF-22は、F-22 ラプターとなりました。
「ラプター」とは猛禽類を意味します。

第5世代戦闘機とは

では、そもそも「第5世代戦闘機」とはなんでしょうか。

しかし、この用語を定義しているのはロッキード・マーティン社であり、他社はこの用語自体を否定しています。
あくまで同社のマーケティング戦略に基づく用語がそもそもの発端であるようです。

それはそれとして、第5世代ジェット戦闘機とは、ロッキード・マーティン社によれば、以下のとおり定義されています。

進歩を続けてきたジェット戦闘機において、空中戦でエネルギー管理戦闘を行えるようにし、また各種の兵器を運用できる新しいセンサーを搭載するようになった第4世代の戦闘機の能力に加えて、超低視認(VLO=高いステルス)性、より優れた機動性、センサー融合による高い状況認識力の提供、優れた維持・管理性、高い展開能力、ネットワークを活用した作戦能力、といった新しい要素を一つのパッケージにまとめたもの。

要は、ステルス性、機動性、アビオニクス、ネットワーク性っていう感じなのでしょうが、この中でも最も重要視されているのがステルス性ですが、F-22では、機体各部の縁に当たる部分の角度をできるだけ同じにすること、その角度の種類をできるだけ減らしてすことにより、溝や段差を減らし、レーダーへの反応を減らしています。

さらに、機体の各部に、レーダー波吸収構造(RAS)を取り入れて、レーダーの電波を閉じ込めたり、拡散させており、さらにさらに、機体全体にレーダー波を吸収するコーテイングが施されています。これらの技術によって、F-22のレーダー断面積は0.01㎡までになっており、これは肉眼で小鳥を探すのにも等しいと言われています。ちなみに非ステルス戦闘機のレーダー断面積は6㎡が標準であり、それと比べるとF-22は60000分の1にまで圧縮されているということです。

実際の戦闘訓練で相手機のパイロットは、「目視できたのに、レーダーに映らないなんて!」と驚いたとか。

ちなみに、F22は、区分としてはF-15と同様、多用途戦術戦闘機に分類されますが、対地兵装の搭載能力は限定的であるため、ステルス特性を生かして効果的に対空装備を無力化し、より高い空戦能力を生かすことによって制空権を確保するための機体であると言えます。

その最強っぷり

F-22は、最高速度マッハ2.25を出すことができます。
これはF-15がマッハ2.5まで出せたことを考えると劣化しているようにも見えますが、アフターバーナーしで超音速で巡航する(スーパークルーズ)ことができるという能力をもっており、これは第5世代戦闘機の条件の一つと言われています(といいつつ、下はアフターバーナー中のラプターさん)。

F22アフターバーナー

さらに、排気口の向きを上下に変えられる推力偏向ノズルによって、ドッグファイトでの高い機動性を可能としており、有視界戦闘における高い空戦能力も誇っております。実際に、2004年に行われたF-15Cの戦闘訓練で104機を撃墜し、さらに、2006年のノーザン・エッジ演習では、144機を撃墜して被害ゼロという圧倒的なパフォーマンスを見せています。

F22フレア

一方、これまで数えきれないくらい演習を重ねてきたので、たまーにですがF-22が撃墜判定を取られたこともあります。
アメリカ空軍で行われた模擬空中戦で、電子戦術機EA-18Gの放った空対空ミサイルAIM-120による撃墜判定を食らっちゃったり、有視界飛行での模擬格闘戦でT-38に撃墜判定を取られちゃったり、また、レッドフラッグ・アラスカではドイツ空軍のEF-2000との模擬格闘戦でボコられちゃったという苦い経験も持っています。

とはいえ、導入されている第5世代戦闘機としては現在唯一のものであり、以下に示す高い能力を見れば世界最強であることは一目瞭然です。

武装として、左右側面2箇所の短距離空対空ミサイル専用のウェポンベイには、AIM-9M/X(通称「サイドワインダー」)を搭載しています(が、サイドワインダー使用時は扉を開き、シーカーを機体の外に露出させなければならないため、ステルス性は著しく低下してしまいます)。

下面ウェポンベイには中距離空対空ミサイルAIM-120A/B(通称「アムラーム」)を4発、もしくはF-22用に翼とフィンを縮小したAIM-120Cを6発搭載します。AIM-120はINSによる中間誘導とアクティブ・レーダー・ホーミングによるFire-and-forgetが可能であり、その射程はなんと72kmにも至ります。

F-15が、短距離ミサイル、中距離ミサイルともに4発ずつの計8発という構成だったのに対し、F-22は、短距離ミサイル×2と中距離ミサイル×6の計8発という構成であり、より遠距離からミサイルを発射して敵機を撃墜することに比重を置いていることが分かります。

ちなみに、空対地攻撃用にはGPS/INS誘導方式の統合直接攻撃弾薬(JDAM)GBU-32を搭載しています。

アクティブ・フェーズド・アレイ(APA)方式のAN/APG-77レーダーを火器管制用レーダーとして機首に搭載し、約250km先の目標を探知できる能力と多様なモードとの組み合わせにより、広いレーダー視野、長い捜索・追跡距離能力、信頼性を持っており、さらに目標が使用しているレーダーの周波数帯に合わせた妨害電波を発信することが可能となっていたり、また、相手の発するレーダーや通信電波を逆探知して方向を解析するESM(Electronic Support Measures)を備えています。
EW(電子戦)システムは、レーダー警戒機能とミサイル発射探知機能を有していて、無線周波数警戒および妨害とミサイル発射探知機能などを持つAN/ALR-94電子戦サブシステムとフレアーを納めるAN/ALE-52フレアー・ディスペンサーで構成されており、機体各所に埋め込まれた30個以上の探知用のアンテナにより、機体全周360度の探知や監視能力を持っている他、460km以上先から発信されるレーダー電波を探知することが可能とされているとかいないとか。

まぁごちゃごちゃ書きましたが、現代の兵器らしく、電子的なネットワーク的な、ハイテク技術の塊でできているということです。

これまで、実戦経験はありませんでしたが、2014年9月22日に、イスラム国への爆撃に参加し、これがはじめての実戦導入となりました(下は空中給油中のラプターさん)。

F22空中給油

それでは、そのすさまじい戦闘能力を実際に見てみましょう。

https://www.youtube.com/watch?v=Q2G_Xn8pTOg

 

https://www.youtube.com/watch?v=lCVVdHp2zvg

 

その高コストっぷり

F-22は、当初750機程度の配備を予定していましたが、1機あたりのコストが1億5000万ドルというとてつもない金額になってしまったため、実際の配備数は187機で打ち切りとなりました。

さらに、厳しい輸出禁止措置により、日本、イスラエル、オーストラリアが導入を希望しましたが、これは実現されませんでした。したがって輸出によって、227億ドル(!)にも上る開発費を回収するという道も断たれているという事態に陥っています。

金に糸目をつけない冷戦期とは異なり、とにかく軍隊もコスト重視のご時世なので、F-22のような金食い虫には辛い時代のようです。

スペックまとめ

F-22のスペック概要をまとめました。

採用:1986年
製造:ロッキード・マーティン、ボーイング
乗員数:1名
全長:18.92m
全幅:13.56m
高さ:5.86m
翼面積:78.0㎡
自重:14.365kg
最大離陸重量:38,000kg
最大速度:マッハ2.25
航続距離:2.775km
戦闘行動半径:759km
固定武装:20mmガトリング砲×1

 

以上、世界最強の戦闘機ラプターさんのご紹介でした。

 


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3 Responses

  1. 2015年4月5日

    […] 世界最強の戦闘機、F-22ラプター […]

  2. 2015年4月6日

    […] 世界最強の戦闘機、F-22ラプター […]

  3. 2016年12月11日

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