シリア内戦
シリアでは、2011年1月26日から、反政府運動及びシリア政府軍と反体制派による武力衝突が続いています。
すでに20万人以上の人が死亡していると言われています。
内戦と呼ばれることがよくあることから、シリア国民同士の紛争と思われがちですが、実際にはシリア国外からの勢力も多く、また、アサド政権と反政権派勢力間だけでなく、反政権派勢力間での戦闘、さらにジハード主義勢力の過激派組織ISISやヌスラ戦線とシリア北部のクルド人勢力の間での衝突なども起こっています。
下記の動画をご覧ください。
鮮明な画像で展開されているため、映画か何かではないかと錯覚しそうになりますが、そこにあるのは現実の戦場なのです。
https://www.youtube.com/watch?v=Q0sUoLkn0T4
なぜ内戦が起こったのか
シリアでは、1963年のクーデター以来、バアス党が支配しており、70年以降は、ハーフィズ・アル=アサド大統領が、対立政党や対立候補者を選挙から締め出しながら30年近くにわたりシリアを指導してきました。
一般的に、アサド政権はシリア国内では少数派のアラウィー派(シーア派の一派:シリア人口の約12%)が主要なポストを占めているため、少数宗派政権だといわれています。
しかし、実際には、政権を担っているバアス党は、「アラビア語を話す者は宗教・宗派にかかわらず一つの民族である」というアラブ民族主義の考え方に基づき、教義上、スンニ派もキリスト教徒も排除してはおらず、スンニ派などのアラウィー派以外の人々も議会や政党、軍・公務員などのポストを占めいています。
そうすることでアサド大統領は、親子2代にわたって、自らの権力基盤を強固なものとしてきたのでした。
そこへ、2011年1月、チュニジア・エジプトで、「アラブの春」と呼ばれる一連の革命が勃発します。
ー大統領は、「チュニジア革命、エジプト革命は中東の新しい時代をもたらした。権力者は人々の要求を受け入れるべきだ」と声明を発表します。しかし、これはヤブヘビでした。2011年2月、なんとアサド独裁政権に対する抗議デモがFacebook上で呼びかけられてしまうのです。その後もデモは勢いを増していったため、2011年4月にアサド大統領の命令で政府軍がデモ隊の鎮圧を開始します。
この際に、軍の一部が反政府側につくという事態が発生し、反政府組織として「自由シリア軍」が結成されます。
こうして争いは激化し、混迷を極め、国内全土で内戦の様相を挺していきました。
当初、反体制派は「自由シリア軍」によって団結しているかにみえました。
けれども、各地で「司令部」が乱立して統制を失い、2012年夏以降、「自由シリア軍」は民衆からの支持を失っていきました。
一方、アメリカなどが支援している、亡命シリア人らを中心とした「国民評議会」や「国民連立」も内部分裂してしまい、混乱に陥ってしまいます。
泥沼化する内戦
これらの反政府組織に代わって戦闘の指揮を執るようになったのが「ヌスラ戦線」というイスラム過激派でした。
「ヌスラ戦線」は2013年春ごろまで、戦闘の主力となっていましたが、実は「ヌスラ戦線」がアル・カーイダ中の過激派の一派にすぎないという事実が明らかとなり、シリアの人々からの支持も、反体制派を支援している欧米諸国などからの支持も失ってしまいました。
反体制派がどうにも団結しきれないまま、欧米やロシアなどの諸外国の中途半端な介入がなされ、状況はまさに文字通りの泥沼化を迎えてしまいます。
被害を受けるのは、いつのときも名も無き民衆たちです。
こうした混乱状況に拍車をかけたのが、2013年6月のレバノンのヒズボラ(イランを支持母体とするシーア派のイスラム主義組織)の参戦でした。
ヒズボラはアサド政権を支援するために内戦に参戦しましたが、これに対抗してスンニ派のサウジアラビアや湾岸諸国が反体制派を支援したために、内戦に「宗派対立」という新たな要素が加わってしまいます。
さらには、2014年に入り、ISIS(イスラム国)と、シリア反政府勢力との間で戦闘が激化しはじめました。
当初、ISISは、シリア反政府勢力から歓迎されていたが、ISISが他の反体制派組織を暴力的に支配下に置こうとして内紛が起きてしまったようです。
急速に勢力を伸ばし、強大となったISISの影響により、ISISと戦うアサド政権の国際的価値が高まっていきます。
当初は、民主化を支持していたはずのアメリカや、欧州各国や国連、シリア国内の反体制派ですら、アサド大統領の政府側を支持する構えを見せ始めているのです。
シリア内戦の映像
「アッラー・アクバル!」と、口々に叫びながら、T-72 を破壊する反政府軍の映像です。
https://www.youtube.com/watch?v=ijORvs4WzqQ
こちらは、T-72からの車載映像が見られます。
続いてT-72やBMP-1が交戦するまっただ中を乗用車が走り抜けていく映像。
戦場が一般化しすぎていて、恐ろしさを感じます。
多くの命が失われていく状況を思うと、いち早く事態が沈静化し、人々が安心して暮らせるようになってほしいと思います。
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[…] http://barbarossa.red/syriancivilwar/ ←こちらが、下記の経緯の原典。 […]